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2004年 09月 25日

得られない年甲斐・続き

音理雄『いちばん優しい』は佳作な上に久しぶりにツボに入り楽しめた作品。
まず冒頭の20ページ強で描かれる子供時代の話が要領よくリアルに書かれており
ありがちな話であっても吸引力を有している。主人公らの性格が良く出ているし。
そしてそれを受けての再会、交流等を通じて二人は互いの好意を再確認する訳だが
小憎らしく見える攻が実は受けにめろめろになっているあたりをうまく処理しているし
能天気な受が彼女と攻への感情の間で懊悩する様が自己中でなく書き込めている。
受が自らの弱さや攻への好意に徐々に気づいていくあたりは納得して読めたし。
お互いが過去の自分を振り返りつつぎくしゃくと感情を募らせていくエピソードには
萌える面が多いし、二人が出来上がる過程に強引さや作為が感じられないのも良い。
また適度にギャグもあり、Hもイラストとあいまって適度にエロいのもポイントかと。
読後感も悪くなく、楽しんで読んだなあという感覚を久しぶりに味わうことが出来た。

本作では受に彼女がいる状況で攻と再会するのだが、彼女がご都合に堕すことなく
その感情まできちんと書かれており、付き合いと別れを通して、受の心理的成長や
受と攻の感情の高まりにもきっちりと役割を果たす辺りが愁眉であると思うのだ。
801作品に「彼女」が出てくることに拒否反応を示す向きも少なくは無いらしいし
大抵の作品ではそれもむべなるかなと思わざるを得ない描き方であることが多い。
もちろん主眼が801である以上、本作でも都合の良い描き方があるのは否めないが
それでも受の性格設定や心理の動きに影響を与える登場のさせ方をしているのは
特筆して然るべきではないかと思う。過度にデフォルメされたり嫌味だったり
作者のコンプレックスが滲み出たとしか思えぬキャラに反吐が出る作品もあるので。


音理雄『辛口恋愛レシピ』は上の読後にとりあえず作家買いしてみたもの。
本作では受の元親友(内心忸怩たるものも抱えていた)が重要な役割を担っており
受攻以外の第三者を絡めてストーリーを展開させる作家なのかなあという印象が。
その転がし方も悪くは無いが、本作では諸々がサービス過剰というかなんというか。
受の出張ホスト絡みのエピソードはありきたりな上に唐突なので醒めてしまうし、
翻弄する攻がステロタイプなので、最後に突然弱さをさらけ出されても戸惑ってしまう。
受は料理の天才っぽいし攻はエグゼクティブ系な設定の上に二人とも美形となると
正直お腹いっぱいという感覚も拭えない。火事が二度起きるのもびっくりしたし。
それでも受の心情などはリアルに書いてあるほうだと思うし、火事の件を除けば
そうご都合が目に付くわけでもないので、まあ無難な作品といってよいのではないかと。
たぶん上の作品にはまったが故の過度な期待のようなものもあったのだろうし。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月12日に転載されたものです。)

by bonniefish | 2004-09-25 12:52 | 小説感想


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