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2012年 12月 04日

玻璃鏡の曇り

ここ数週間は接客的な要素を含む仕事が一段落していまして,飲み会は多いものの
比較的落ち着いた日々を過ごしています。とはいえ積読本の多さは相変わらずですが。


さて,またぞろ本ブログの本旨とは異なる話題ですが,ナヲコ女史の新作目当てに
禁忌アンソロなる『Feroce』を購入しましたゆえ,一言コメントをしておこうかと。
(前回の記事の一部だったものを長くなりすぎそうだったので独立させたものです)
とはいえ,既に畏友がコメントを残しており,しかもお互いの評価している作品が
かなり重なっているということもありますので,一言だけ触れるに留めておきます。

全体としての感想については,上記リンクをご参照くださいと言うほかないのでして,
何が「禁忌」かという定義すらあいまいに作品を寄せ集めたのみとの評価は否めず,
統一感に乏しいといわざるを得ないですし,「一般的でない」恋愛を描いたところで
それをただ提示するだけでは百科事典や博物学的な見世物主義にしかなり得ません。

「禁忌」である以上は,それを犯すことへの「恐怖」「畏れ」「躊躇い」を描くか,
それを犯さざるを得ないような「激情」「本能」,その後の「背徳感」「罪悪感」を
書き込んで欲しいと思うのは,過度に文学的な古いアプローチなのでしょうか。
「JUNE」の原点であり,初期の「やおい」にこそ見られたものの,近年の「BL」から
ほぼ失われた「男同士であることの必然性」という視点にも繋がると思うのですが,
そんな複雑な情動の描き込みは,使い捨てられる「萌え」には不要なんでしょうね。


本作でのベスト3は,渡まかな『泪は弧を描いて』,水瀬るるう『やさしい毒』,
ナヲコ『アイドル同盟!』になるかと思います。話も画力も申し分ない感じです。

『泪~』は,男女の双子間の報われない恋愛感情をストイックに描き切った好作品。
重くなりすぎずとも,前世からの宿業をにじませ,関係が許されざることを知るも
想いを止められない主人公の想いや,それを弄ぶかのような背景に心動かされます。

『やさしい毒』は,小悪魔的な高校生男子が既婚の女性国語教師の隙に付け込み,
無邪気にかつ残酷に籠絡を図るという作品。実際は教師の髪をセットする場面での
危ういやりとりがメインなのですが,その後の頽廃的な展開が見てとれるようで,
最終ページのお互いの眼が描かれない会話の応酬にはゾクゾクとさせられました。

『アイドル~』は,男女の同性アイドルカップルの交流と深化を描き出した好作で,
互いの存在を知り勇気づけられるとともに,交際報道を機に先輩格の男性カップルが
双方出演の生番組でカミングアウトをする展開には説得性もあり楽しめました。
ただページ数が少なく,双方の感情の深まりや,出会ったことによる変化については
上述した程度にしか描かれていないなど,芝居の書き割りのような印象は否めず,
同女史のファンとしては愛でつつも惜しまれるという感が強くなってしまいました。
なお,畏友も触れた通り,受の「さくや」のショタ的な可愛さはピカイチです(笑)。

他には,悪口を言い合いお互いに仲が悪いと思っていた姉弟が,父親から悪口を
禁止されたことを機に互いの距離の近さと恋情に気付く大塚子虎『ディプラデニア』,
ベタなテンプレ作品が最終コマで見事一気に背徳感を帯びるHisasi『甘いとき』,
といったあたりは悪くなかったですが,その余はまあ・・・といった感じでした。


そろそろ『ひらり、』の最新刊も届きますし,同アンソロの番外編『ほうかご!』も
なかなかの出来だったので,一度まとめて感想を書いてみたい気もしていますが,
いつも通りのやるやる詐欺になりそうな気もしています。忘年会も続きますし。
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by bonniefish | 2012-12-04 23:36 | 漫画感想 | Comments(0)