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Ethos-Annex

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2005年 11月 12日

未成熟の隠蔽

購入欲求に見合う量の買い物が出来ず更にストレスに。まあ前からの事ですが。
801が自分にとって最も効率的にニーズを満たす方法なのだとは分かっていても、
昨今の非効率性には嘆息するのみで。ツボの狭まりと業界のシフトのダブルパンチ。
しかも手を広げてみたら以下のような小説感想の復活になってしまいましたし(苦笑)。

思うところあって雑誌の方も安易に掲載作品をスルーせずに一応目を通してみることに
してみたのですが、早くも沈没気味・・・。それでも読めないものの多さにも改めて嘆息。


桜木ライカ『嘘と本音としょっぱいキス』は通常の学園ものとの予想に反して始球式に。
人間関係もキャラ描写も尽されない時点でのエロシーンが妄想だったのは良しとしよう。
狂言回しキャラや当て馬キャラのお見事なテンプレ振りも、攻が懊悩する描写の浅さや
受の白痴のベタっぷりもともかくとして、こんな些細な勘違いで強姦に及ぶってありか?
ありなんですよね裏表紙の煽りをよく読めば。気付かなかったこちらも悪いのでしょう。
まあ受の傷ついた描写もあったし、安直に流されるよりはマシかと思いましたよ始めは。
最後に謝罪してハッピーエンドに終わる強姦ものを非難しては801読んでられませんし。

ただそれにしちゃ受の傷が深いなと思ったら、当て馬の優しさにあっさりなびくんですか。
まあ強姦自体がかなりキツイ描写だったので、これは確かに別人のフォローがないと
受も癒されないとは思ったのでまあスルーしましたよ。当て馬による癒しが続く中で、
立ち直った受が攻への好意を自覚するんだろうと思っていましたから。そしたらなんと。
攻のとばっちりで受がまた強姦されるってどういうこと? しかも複数人ってなにさ?
「鬼畜」ってのは愛が要らないんですかねえ。この展開はいくらなんでも酷すぎるだろう。
一応恋愛小説だぞ? 単に陵辱シーンが描きたいたらそういうジャンルで描けば如何?

男性向けエロのように強姦する側の妄想たっぷりに描かれる強姦もたまらないが、
される側の視点で自らに与えられる陵辱を詳細に書くという神経も理解し難い。
そんなものを書いたり読んだりいる人間は受の心情というものを顧慮しないのか?
強姦は「可哀そう」という感情で括れるような悲劇だとはとても思えないのは私だけ?
その強姦中に受が攻への好意に気付くという意味があるにしても無神経に過ぎる気が。
しかもその後にこの強姦によるトラウマが当て馬としようとしたHに失敗する理由として
登場してくる辺りの悪趣味さも耐え難かった。一応筋が通るとはいえ不快極まりなくて。

それから攻が陵辱者を制裁し、受と攻が互いの好意を再確認する流れはまあ自然で、
そのままHに突入するのも止むを得ない。その前に一応の謝罪シーンもあった訳だし。
まあこのHは当然受の心身の傷を癒すための紳士的なものとなるのだろうと思いつつ、
いつもの通り斜め読みで読み流そうとした訳ですよ。ところがそうは問屋が下ろさない。
どうも攻の欲望のままに押し倒す要素が強いように思えて引き気味だった私の眼に
飛び込んで来たのが次の文。書き写すのも不快極まりないがそのまま引用すると、

『(受)だけでもまともならば思わず「エロオヤジ!」と罵りそうなだらけきった顔。
叱り付ける者も嗤う者もいないのをいいことに(攻)はそのまま下肢の中心に顔を寄せた。
こんにちはー。あるいはおひさしぶりー。股間のモノに懐かしそうに声をかける。
酔っているのかとなじられれば、この男は絶対に威張りくさって大声で言うだろう。
「(受)に酔ってなんで悪いんだ!」と。』

・・・自ら一度強姦し、さらに強姦されたトラウマを持ちの相手を抱く姿勢がこれですか。
まあどうやら愛とやらが溢れきってるようですしエロ爆発になることはあり得るでしょう。
しかしかつて陵辱した相手の裸を眺めての感想があろうことか「こんにちはー」だと?
脳湧いてるんちゃうか? 自制なり慈しみなりが出てくるべきじゃ? つうか何書きたい?
このシチュで攻がエロを爆発させる時点であまりの自己中ぶりに絶句していたのだが、
続いてのこの描写を読んでは思わず本を本当に壁に叩きつけるしかなかったわけで。

しかも今この記事を書くために一応最後まで斜め読みをしてみたところ、番外編では
ガキレベルの独占欲を爆発させた攻が受にキスマークやあろうことか噛み跡までも
残すなんて描写が眼に入ってきて、その無神経さには再び本を放擲してしまったし。
これも愛とやらの表現なんでしょうねえ。作者的には幸せになってるんでしょうしね。

購入してしまった対価を惜しむあまり、1回目の強姦の辺りで感じた危機感をおして
読み進めてしまった自分が悪いとは思うのだが、こんなありえない展開をされても
全く納得のしようも無い。久しぶりの即捨てですよ。この本を持っていることすら不快。
つくづくも裏表紙の「鬼畜」という描写から内容を読み取れなかった自分を悔いるのみ。

それにしても801から強姦ネタが消えないのは何故なのだろう? 女性向けなのに。
実は性的暴行の理由は好意の暴走だったのだ、と納得したい人が読んでいるのか?
強姦するくらい好意に煮詰まる点が好きなのか? でも受視点である意味が無いし。
強姦されるくらいに愛されたいという発想だとすると全く理解できないと言う外無いが。
愛の無い強姦を楽しんで読むなら想像力が著しく欠如しているとしか思えないのだが。
お話だと割り切って読むべきだという反論も確かに考えられるが、お話の中だからこそ
現実に溢れているような理不尽な暴力とは無縁にあれと私は思ってしまうのだが・・・。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月13日に転載されたものです。)

by bonniefish | 2005-11-12 03:34 | 小説感想


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