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Ethos-Annex

tanbi3.exblog.jp
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2004年 10月 03日

踏み外す生活

後期の授業が始まるも、教科書を買いそびれたり予習が遅れていたりと散々でして。
轍も深く長く踏破し続けると外れることも容易ではなくなるということでしょうか。
予復習やバイトの合間を縫って更新は休み中のペースを上回りたいところですが。
定期的にご来訪頂く有り難い方も少ないなりにおられるようですのでそれを励みに。


北川とも『バディ・システム』は受の諸設定を除けば、お約束だが楽しめる作品。
24歳の社会人がまんま女顔で一人称が「僕」という辺りにかなり引きかけたが、
攻に色々と弄られながらも惹かれていく辺りは王道だが違和感無く書き込めているし
安直にエロに走らない辺りも近年の作品としては珍しいと言ってよく、ポイントが高い。
個人的には、出来上がったら即Hという801の定番パターンには異議を唱えたいので。
相手への恋愛感情を性欲で表現しようとするのは安直に過ぎると常々思っているし。
本作は漠然とした好意を感じてからの展開が長く、出来事を通じて心情が揺れる様を
きちんと描いているし、最後に結ばれるまでの流れにも説得力があったと思う。

まあエピローグが複数あり、しかもちょっとベタというかあざとい感じがするのも
正直あまり趣味ではないのだが、冒頭に述べた受の設定とこの終わり方を除けば、
割と楽しんで読むことができる地に足の着いた王道系の好作品といえるだろう。
2冊続けて悪くない作品に当たることなど悲しいかな久しぶりで、少し驚いてしまった。
ただどちらもアイスノベルスなわけで、やはり休刊後の編集部の動向が気になるなあ。


ひじり聖『恋愛不器用』は演出過剰な昼メロのような感じ。後半は悪くないのだが。
冒頭から受の不幸さが、その自意識過剰さと周囲の冷淡さを通じて描かれていて
正直読んでいて不快にすらなってしまった。特に濡れ衣を着せられるあたりなど。
私は主人公に寄り添う形で作品を読むために、設定が相容れなければもちろん、
扱いが妥当でない作品も評価しない面が強い(読み方も評価も例外はあるが)。
前回も書いたが、主人公を不幸にしたからといって読者の同情を得られる訳ではない。
特に本作では受の自意識過剰さや周囲の過度の冷淡さに苛立ちを感じてしまった。

さらに身体の関係を求められてから相手に情を移すあたりの描写が殆んど見られず、
気がついたら愛憎劇が始まってしまっていたのにもはじめは付いていけなかったし。
だが、後半の復讐譚のような展開はよく書き込めていたし、個人的にもツボだった。
受の性格が変わりすぎのような気もするが、相手に一矢報いるために策動する辺りは
読んでいて引き込まれたし、多少のカタルシスめいた感覚を得ることも出来た。
801としての枠を保っているがために、こうしたスパイスを楽しめたのだと思うが。

あとラストにエロシーンが無かったため、最後まで展開を楽しめたのも高評価(笑)。
それぞれの心情も最後には明かされているし、読後感自体は悪くなかった。
まあそれでも前半は辛いし、口封じに体を差し出させるなどという設定なんぞは
始球式ものなのだが、ただ筆力はそれなりにあるので読み進められたというか。
読者によって本作の評価は分かれるのではないかと思う。自分としても微妙。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月12日に転載されたものです。)

by bonniefish | 2004-10-03 22:53 | 小説感想


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