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2004年 08月 03日

狂騒の続き

渡海奈穂『熱愛』はやはりこの人独自の世界が構築されていて私にはたまらない作品。
田舎町の小学校に突然やってきた綺麗な転校生。彼に幼い思慕を寄せるガキ大将が
彼をいじめるクラスメイトへの体面と自らの感情に引き裂かれてついに抱いてしまう。
しかしその直後受は再転校し、攻は受への感情に懊悩し、受も病的な執着を募らせる。
この人は相手に対する異常に強い執着心を書くことに非常に卓抜した作家だと思う。
本作ではそうした執着をキャラが表に出し、ある種病的ともいえる程に暴走しているが、
ストイックな文章が裡に滾る熱を滲ませつつも端正さを失わず抑え目に描写することで
そうした狂想が絶妙なまでのリアリティをもって読み手に迫ってくるわけですし、
エロシーンにおいても独特の、蠱惑的なのにべたべたした雰囲気を醸し出すのです。
なにせ前半はショタアンソロに載っていたくらいですから小学生同士のエロなわけで
そこにちゃんと小学生らしい幼さゆえの凶暴な執着と暴走振りが書き込んでいる辺り
流石としか言いようがないでしょう。その後の成長もきちんと踏まえて話を進めるし。

大絶賛をしてしまいましたが、当然ながらこれは私の趣味と合致しているからという
単純かつ個人的な理由故に他ならないわけで、あまり参考にはならない気もします。
当然キャラやストーリーにご都合な部分はありますし、文章も好みは分かれましょうし、
こういうドロドロがお好きでない向きも多いでしょう。エロもややどぎついかと。
それでもそう癖の強い作家というわけではないので、ご一読を強くお勧めしますが。


鹿住槇『君からの逃げ道』は絶版本の文庫化のようで、古き良き香りが悪くない。
当然鹿住槇ですからやんちゃ受に万能系だが暴走する攻というパターンな訳ですが
お馬鹿な受を嫌味でなく等身大に描けるあたりはベテランなのか本人の投影なのか。
話も明快なプロットに沿って進むし、読んでいてストレスは全く感じなかった。
類作に飽きていなければ、息抜きや疲れた時などにお勧めの作品といえるだろう。

最近のこの人の作品には妙な違和感というか相容れないものを感じていたのだが、
考えてみると彼女の中にキャラや読者を母親的な立場から捉えているような節を
感じてしまっているからかもしれない。相当なベテランだし仕方が無いのだろうが。
『マリ見て』を読んだときにも似たような感覚に陥ったのだが、キャラに寄り添って
小説を読む以上、作品にとっての神である作者が主人公を見下ろす視点に立つと
自分まで見下ろされているような不快感を感じてしまい、素直に楽しめないわけで。
読者にキャラクターへのシンパシーを持たせるのがラノベの真骨頂と思うのですが
やはり母の愛というのは強く出てしまうのでしょうかねえ。いやはや・・・。


水城薫『まなざしのレジスタンス』はルビーの前作のサイドストーリーですな。
相変わらず微妙で自意識過剰で周囲を馬鹿にしているのに人気があるという、
俺様な受がスタイリッシュっぽく振舞っていくわけですが、別の意味で微妙だなあ。
特に本作では攻が受に執着したり振り向かせたいと思う理由が碌に書かれておらず
攻パートの独白なんぞ読んでも何がなんだかサッパリで。なんでゲイでもないのに
男の子にこれだけ執着するのか謎だし、一気に監禁強姦したり策を巡らしたりと
色々やっているのも意味不明。これじゃあ攻は完全に偏執狂ですよ。気違い沙汰。
そりゃあ納得できない感情が恋だというのはわかりますが、一応小説なんだから
主人公が納得できないなりには理由などが書かれてないと付いていけないわけで。
設定しか売りが無いのにそこを疎かにされては読んでいても醒めるしかなかった。
わざわざ前作と同一世界にしてキャラを持ち出した理由も殆んど見出せないし。
前作はルビー系としては個人的に悪くない評価を下していたが、再考が必要かも。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月12日に転載されたものです。)
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by bonniefish | 2004-08-03 06:27 | 小説感想 | Comments(0)


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