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Ethos-Annex

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2004年 07月 30日

負荷のみが肥大化する

どたばたしている間に本が10冊溜まってしまったので気が重い・・・。

小説の感想を書く前にとりあえず一言だけ今読んだ『D-Pri』についてコメントを。
ショタに男性系の出版社や作家が流入して来て二極化が進む中で、このアンソロは
一体どこに行きたいのか。美輝妖なんかをずっと多用しているのも解せないし。
ショタ雑誌やアンソロは近日のお姉さま系との絡み狙い以外はほぼ揃えてきたが
このアンソロについては購入を再考すべきではないかとも思ってしまっている。
・・・鹿島田しきの評価が固まるまでは捨てられないけどなあ。No.12とか見ると。
絵が絵だし近作を見るにまとめて切っても良い気がするがやはり未練が捨てきれず。


麻生玲子『あなたに落ちていく』は落ちついた文章に受の執着がうまく滲み出ている。
これも割りとゲイっぽい作品だが、気安く体を繋げるというキャラ立てだけに終わらず
享楽的な感覚やそのうちに秘められた純情さや気弱な心情などまで書き込まれており
読みながら妙な現実感を感じさせる作品となっていた。ベテランゆえだろうか。
ただ不倫ネタであるし、それぞれの心情がマイナス面やドロドロしたところまで
書かれているので、あっさりと読み飛ばしたい向きには不向きであろう。
また後半の展開がやや安直であったり唐突であったりするのもやや気にはかかる。
作風を変えようとしての諸々の試みなのだろうが、やや失敗気味と言えるであろう。
従来のこの人がよく書いたしっかりとしているが軽妙で前向きな話を好んできた
年寄りの戯言ですがね。そういう中間的なものは却って読み手が少ないから、
能天気な作品群かエロやハーレクインなどに走った濃い作品かが出てるんだろうなあ。


飛田もえ『南へ向かえ!』はねえ、一読して同人誌の再録かと疑ってしまいましたよ。
なにせいきなりやくざ風の男に当たり屋をされて車に乗り込まれ、手錠で繋がれた挙句
東京から九州までのドライブをさせられ、しかもその途中でカマを掘られている。
それなのに愛が芽生えているというんですからちょっと無茶苦茶ではないかと。
さらに肝心な愛の芽生えが殆んど書かれていないため、受の混乱に付き合いながら
読んでいたら、受が勝手に惚れたなどと言い出しこちらだけ混乱に取り残される羽目に。
レーベルもピアスノベルスだから当然にエロシーンが頻繁に延々と書かれており、
ひたすら読み飛ばすしかなかった。3編目の続編もその違和感は拭えぬまま終わり。
2編目の過去話はそれなりには読めたが、肝心の恋愛感情がやはり書き込み不足か。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月12日に転載されたものです。)

by bonniefish | 2004-07-30 03:18 | 小説感想


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