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Ethos-Annex

tanbi3.exblog.jp
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2004年 03月 09日

本の整理

引越しの関係で実家にあった西村京太郎と赤川次郎と群ようこをブックオフへ。
考えてみれば自分で買った本を捨てるのはほぼ初めてで、ちょっと感慨めいたものも。
段ボール2箱持って行っても1000円強でしたが・・・。

ストレスから落ち着いて本が読みにくいため801ばかり読み散らしています。


はるか真朝『その声に包まれたい』は雑誌を読んだときにもクラクラした話。
何せ引越し先で小学校の下校放送の声に聞きほれたら、その小学生と町で出くわし、
捨て猫を拾った縁などで親交を深めていると告白されるというストーリー。
なんだかなあ・・・と思いつつも本作への親和性を否定できないことへの諦念が、
却っていわゆるときめきめいた感覚をより強調するわけですね。業とは全く恐ろしい。
しかし姿が見えない状態で声に聞きほれるというきっかけはなかなか面白い。
続編になってから相手の将来を勝手に思いやってドツボに嵌るのはお約束ですが。
評価眼が曇ってしまっているのは承知ですが、まあ佳作ではないかと。


榎田尤利『Largo』は作家で敬遠しようとしたのだが(昔痛い目にあっているので)
イラストとあらすじに惹かれて購入。まあなかなかよろしかったのではないかと。
ピアノネタで、天才に惹かれる秀才という非常に良くありがちな題材だが、
筆力は一応ある作家が料理すればそれなりに読めるものになるのは道理かと。
(前読んだのは設定が酷かったからなあ。死体が動き出したんじゃなかったか)

まあ曲名が章タイトルたったり音楽ネタで怪しい箇所があるのにはもにょりましたが。
絶対音感の説明で電話の音を「ミ#」と表現している箇所があって、もしかしたら
これは「Eの若干高い音」の意味なのかもしれない、という慎重論が頭をよぎりつつも
「EとFが短2度だとも判らず適当に書いたんだろうなあ」と思ってしまったり。
あとまあ勝手にお互いを思いやりあってドツボに嵌るのは定番なのでいいですが、
本作はいささか暴走傾向があるかなあと。特に攻が私には破天荒に思えた。
他には当て馬が巧妙に動きすぎというか引っ掻き回しすぎというか。
障害児への音楽教育みたいなネタも出していたけど、正直消化しきれていないし
わざわざ登場させた意味が見出しにくい、というか逆効果にも感じられてしまった。


桜井ちはや『gift』は無難なアイドルもの。マネージャーが受なのは珍しいか。
まあ案の定仕事のカタに身体を要求するプロデューサーが出てきたり、
デートが雑誌にすっぱ抜かれ(しかも女と間違われる)受が動揺して別れようとしたり、
「芸能界」の「因習」を打ち破って「天才」の「努力」で世界にはばたいてしまったりと
胸焼けしそうなフルコースが用意されている訳ですが、まあ読めることは読めました。
しかし相手に嫌われたくないから本音を言わずに誤解されて揉めるという展開は、
特にくっついた後の話では8割以上の確率で出てくるけど、そんなに好まれるのか?
恋愛がうまくいかないのは相手が自分に遠慮してるからに過ぎないのだという感覚を
抱きたいのだろうか、それとも逆に言いたい事を言わないのがリアルでもデフォなので
読者が感情移入しやすいからこれだけ頻繁に用いられているのだろうか。
・・・まあこんなことを邪推するのはひたすらに野暮ですけどね。

(初出:『Ethos』「やおい雑記」。本記事は2006年10月12日に転載されたものです。)

by bonniefish | 2004-03-09 00:02 | 小説感想


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