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2010年 11月 16日

小閑

しばらく接遇が必要な仕事がないことから,書類仕事が本格化するまでの2週間ほどを
比較的穏やかに過ごしています。とはいえ早ければ来年2月に内部異動なのですが・・・。
先週末には日直を急遽交代してもらい鹿島臨港線に乗りに行けたのは収穫ですかね。

また,鷺沼やすな女史のサイトが移転され,オリジナル小説が充実して嬉しい限りですが,
さらには通販が再開されたことから,早速未入手の同人誌を注文して読み耽っております。
特に『夢の卵』の番外編については,各登場人物の後日譚(一部は前史)となる日常が,
等身大で濃やかに,共感性を持って描かれており,とても懐かしい彼らと再びめぐり合い
しばし同じ作品世界と時間を共有する喜びを,心ゆくまで堪能することができました。
まだ総ての本を読みきってはいないので,残りの購入分を読むのがとても楽しみです。


さて,またぞろ畏友から百合の本を借りて読みましたので,簡単に感想を挙げておきます。
最近なぜ801の感想も書かず百合の感想ばかり挙げているのか理由を考えたのですが,
単に借りた本を返却する前に感想を書かなければならないという身も蓋もないものでして,
締め切りという物の持つ偉大な効用に改めて感じ入った次第です。我ながら怠惰な・・・。
流石に反省はしておりますので,年内に朝丘戻。や上記同人誌の感想は書きたいなあと。


まずは『つぼみ vol.7』。厚い割には個人的には読み応えがあまりなかった印象かなと。
やはり一番面白く読めたのは水谷フーカの『ロンリーウルフ・ロンリーシープ』ですかね。
一見タイプが違うがシャイさなどが似合いの二人がぎこちなく距離をつめる描写はお見事。
今後2人が親交を深めていく様子がどのように描かれるか非常に楽しみになる作品です。
流されるままに読み始めた百合ですが,水谷フーカを巡り合えたのは幸運だったかなと。
既刊の単行本3冊も各々ジャンルが違うのに彼女らしい持ち味が出ていて楽しめましたし。

きぎたつみの『ロンサム・エコー』は中篇ということもあり後篇で話がどのようになるか
興味は惹かれつつも,少し説明が少ないというか設定に甘えているような節もあるような。
とりあえずは次号が待たれますが,きれいには纏まりきらないような予感がします・・・。

ナヲコの『プライベート・レッスン』は,慕っている従姉に親しい先輩がいることを知り,
これを機に自分の気持ちや相手との関係を見直し始めるという展開はなかなかですが,
やはりどうしてももう一段深い描写や展開を期待してしまうのは勝手な祭り上げですかね。
先輩のピアノ演奏の描写や,主人公が先輩との会話を受けて自分の心を見つめ直す姿は
もっと描き込んでも良いのではないのかなあと思いました。それでも満足していますが。

後はお調子者の主人と尽くす家政婦というベタなりに楽しめたかずといずみ『めとらば』,
勘違い系編集と対人スキル0作家のかみ合わせが面白いコダマナオコ『レンアイマンガ』,
味のある絵と会話の妙で女子高生同士の微妙な関係を活写した由多ちゆ『わたしの花』,
キャラの動きがわざとらしく見えるのが惜しい三谷知子『ニックネーム・アパート』
といった辺りには触れておくべきかなと。やはり琴線に触れた作品は少ないですね。
逆に,大朋めがね同様男性読者に受けそうな磯本つよし,暴走ぶりが顕著な玄鉄絢,
相変わらずなカサハラテツロー,吉富昭仁,といった辺りが売れ線なのでしょうが・・・。


続いて『つぼみ vol.8』。これは水谷フーカが掲載されていない分さらに印象が薄くて。
きぎたつみの『ロンサム・エコー』はまさかの百合カップル間のDVネタから一気に展開し
最後には主人公2人が明るく笑い会うコマで大団円を迎えるという割と力押しな感じに。
この理事長の孫娘的な真っ直ぐな怒りというのは紺野キタの『Cotton』でも描かれており
個人的には好きなネタなのですが,ちょっとこちらは尊大に過ぎるし権力を笠に着ていて
正直若干マイナスかなあと。あくまで個人的な好みですし魅力的なキャラでもありますが。

ナヲコの『プライベート・レッスン』は先輩からまさかの心境告白を受けるという話に。
主人公のぐるぐる感も唐突な印象があるのですが,先輩が数回会っただけの主人公に
最大の秘密を割とあっさりと話してしまうという展開には若干の違和感も覚えたり。
特に先輩がなぜ恋情を抱くようになったのかはどこかでフォローしてもらいたいなと。
全般にあと1.5倍くらいのページを使って描写が尽くされればより良いように思います。

宮内由香の『夏の思い出』は幼時に年長者の気まぐれに翻弄され取り残された側の感傷を
淡々と切り取った佳作で,回想の独特の妖艶さと主人公の透徹した哀しみのよう心情が
リアルで芳醇な余韻を残すものでした。それぞれの初登場コマの顔の影が良いですね。

由多ちゆの『神様とあめふらし』は美少女側のキャラが作り物めいてややあざといが,
雨女の等身大のキャラには好感が持てるし,2人の交流についても独特の間合いと空白を
うまく使ってよい雰囲気で描けている辺りは悪くないかなと。今後の成長に期待ですね。

あとは先号とかぶらない範囲でのみコメントしておくべきものについて簡単に触れると,
主人公が反省するというベタな展開だが大団円で安心できたかずといずみ『めとらば』,
編集者のお見合いに揺れる所で終わり次が気になるコダマナオコ『レンアイマンガ』,
やや苦手だが目を引く独特の絵と壊れたキャラが印象に残る鈴菌カリオ『花と星』,
辺りかなと。あと小川ひだりはやりすぎですし,縞野やえも男性読者には受けそうか。


やはりこれだけ読んでも『ひらり、』の方に親和性を感じることは否めないのですが,
次号は水谷フーカが載りますし,鈴木有布子や関谷あさみも載るということなので,
とりあえずは読んでみたいと考えています。ただ,肝心のナヲコ作品が載らないので
畏友が同号の購入をためらっているのが問題なのですが・・・。若干出資しますかね。
(自分の場合はマニア根性から手を出したアンソロは総て買い揃えてしまうので,
 同種の問題は生じたことがありません。これはこれで財布と本棚に厳しい訳ですが。)

by bonniefish | 2010-11-16 02:11 | 801雑記


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